論文概要

タイトル:交流分析に基づくユーザ感情を用いた行動決定モデルの構築
An Action DecisionModel for Emotions based on Transaction Analysis
著者:澤井夏美(博士(前期)課程)

本研究では,人間とコンピュータの理想的なインタラクションを,人間同士と同等のインタラクションの実現であるとし,その実現のためにはコンピュータが個性を持つように振舞う必要があると考えた.そこで,システムに性格モデルを構築し,それに基づいてユーザの心理状態を推定し,推定したユーザ状態に合わせて行動を行うモデル構築を構築した.そして,提案モデルの実装を宮澤賢治システムにて行い,評価実験を実施した.評価実験(1)では,提案モデルに基づき構築した賢治システムエゴグラムと賢治システムの朗読を聞いて被験者が作成した賢治システム評価エゴグラムを比較し,10件中5件において有意な相関が見られた.これにより,本提案モデルの有効性が示唆された.しかし,同じ10件中5件において,有意な相関が見られなかった為,詳細な分析が必要である.評価実験(2)では,ユーザに対応したインタラクションが出来ているか,という観点から被験者にアンケート調査を行い,その結果を元にユーザと賢治システムのインタラクションログを分析した.その結果,20名中11名においてシステムのインタラクションがユーザに「対応していた」という結果が得られ,提案モデルが有効である可能性が示唆された.これらの評価実験結果により,本研究における提案モデルの一部は有効性が示された.今後の課題としては,賢治らしさの評価,ユーザエゴグラムの活用,その有効性の評価,ユーザ感情変化への迅速な対応の実現などが挙げられる.