論文概要

タイトル:確率モデルを利用した照応解析の研究
著者:高橋慎之介(博士(前期)課程)

本研究では、前方照応における指示詞の照応解析を、確率モデルとセンタリング理論とを組み合わせることで実施する手法を提案する。本手法は、コーパスにおける先行詞とそれに対応する照応詞(指示語)に対し、それらにかかる動詞との意味的な類似度に基づく確率モデルを構築し、そのモデルに基づいて、先行詞の推定を行う。意味的な類似度を用いることにより、従来の手法よりも頑健性が向上することが期待できる。またセンタリング理論の知見を加えることにより、精度の向上を図る。新聞記事に対する実験の結果、人が判断した先行詞と一致する語を比較的上位に抽出することができた。また文学作品に対しても実験を行ったが、もととしたコーパスの影響が大きく、不十分な結果を得た。残された課題としては、コーパスへの依存の軽減、精度の向上、計算時間の短縮化があげられる。